甲状腺は首の前方でのどぼとけのすぐ下にあり、ちょうど蝶が羽をひろげたような形で気管を抱き込むようについています。大きさは、縦が4cmほど、重さが20g以下です。
薄く柔らかい臓器であり、はれがなければ首を触ってもわかりませんが、少しはれると手で触れるようになります。さらに大きくなると首を見ただけではれがわかるようになります。
人の体ではさまざまな種類のホルモン(女性ホルモン、男性ホルモン、副腎皮質ホルモンなど)が作られています。
ホルモンを作る臓器を内分泌器官といいますが、甲状腺は内分泌器官のひとつであり、食物(おもに海藻)に含まれているヨウ素を材料にして甲状腺ホルモンを作る機能をもっています。
食物として摂取されたたんぱく質、脂肪、炭水化物は代謝され、体の組織を作る材料や体を動かすエネルギー源として利用されます。甲状腺ホルモンにはこのような新陳代謝の過程を刺激し促進する作用があります。また、胎児の発育や子どもの成長にも重要な役割を持っています。
甲状腺ホルモンには、4つのヨウ素を持つサイロキシン(T4)と、3つのヨウ素を持つトリヨードサイロニン(T3)の2種類があります。
甲状腺ではおもにT4が合成されますが、肝臓などでT4がT3に変換されることによってホルモンとしての働きを発揮するようになります。
体内では、血液中の甲状腺ホルモンが常にほぼ一定の値を維持できるような仕組みが働いています。これをコントロールしているのが、脳の下垂体という部分から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)です。TSHは、甲状腺を刺激し甲状腺ホルモン(T4,T3)の分泌を促す働きをしています。
血液中の甲状腺ホルモン(T4,T3)が多くなりすぎると、下垂体からの甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌が抑えられ、T4,T3の分泌も減少します。逆に血液中のT4、T3濃度が低くなると、TSHの分泌量が増えてT4、T3の分泌を促そうとします。こうした仕組みをフィードバック機構といいますが、これによって血液中のT4、T3の量は、常に一定の範囲を維持できるように調節されています。