CTとは、X線を利用して人体の輪切りの断面像を作る装置です。甲状腺疾患のみならず現代医療には不可欠な医療機器の代表といえます。
現在では断面を薄くすることで、病気による小さな変化の発見・観察だけではなく、たて、よこ、ななめといった任意の断面を再構成し、病変部位をわかりやすく観察することができるようになっています。
当院では80列MDCTを使用し広範囲かつ高速で撮影することが可能です。また、被ばく低減のためにVolume ECという機能を使用しています。Volume ECとは患者様の部位や体型により、スキャン中の管電流値を制御することで、X線被ばくを最小限に抑えることができる機能です。
代表的な検査(撮影)部位は、頚部(甲状腺)、胸部です。以下で、その代表的な2例をご説明します。
CTでは、超音波検査では探りにくい部分、また甲状腺のまわりの他臓器がどのような位置関係であるかを把握するために行います。そしてここで撮影されたものは診断だけではなく、手術する際にどのように進めるかという地図のような役割もしています。
また、手術後再発の検査目的に行なうことがあります。
甲状腺疾患の正確な診断のために、造影剤※(非イオン性ヨウ素造影剤)という薬を静脈より注入して撮影します。病状などによっては、造影剤を使用しない場合もあります。(図1) 検査時間は20分程度で終了します。
※造影剤とは、(図2)のように画像にコントラストをつけ、病変を発見しやすくするための検査用の薬です。造影剤が流れる部分、すなわち血流のある部分は白く映ります。特に甲状腺の周囲は図2のように細かな血管やリンパ節が複雑に位置しているため、その位置関係を把握するためのとても有用な薬となっています。
細かな血管やリンパ節の位置関係が明瞭になります。
アレルギーのある方、喘息のある方、以前に造影剤を使用し体調を崩されたことがある方、心疾患、腎疾患、造影剤使用後の3日間授乳の中止ができない方。
甲状腺の悪性腫瘍手術前の患者様が多数を占めます。甲状腺の悪性腫瘍の多くは、進行がきわめて遅い「おとなしい」がんとは言われていますが、発病後に肺に転移することもあります。
そのため胸部CT検査では、手術前に進行状況の確認を行なう精密検査が主となります。また手術後に期間を置いて、転移がないことを確認するためにも行います。
胸部CT検査では、造影剤は基本的に使用しません。それは撮影時に、肺のなかの空気が造影剤と同じようにコントラスト差を作るためです。したがって、空気で満たされ十分に膨らんだ肺のなかに存在する転移巣は、造影剤を使用せずに観察することができます。(図1)
10分程度の検査であり、ほぼ造影剤を使用することなく検査が可能です。