アイソトープ検査とは、微量の放射性同位元素(ラジオアイソトープ:RI)を含む薬を静脈注射する、またはカプセルを服用することで、薬が目的臓器に集積し、その薬から放出される微量な放射線を専用の装置(ガンマカメラ)で検出し臓器や組織の大きさ、機能、位置、形態などが調べられます。この検査をシンチグラフィと呼び、これによって得られた画像をシンチグラムと呼びます。またシンチグラフィには甲状腺摂取率、レノグラム、肺局所機能検査などの検査もあります。
また、ガンマカメラを体の中心を軸に回転させ多方向の画像を収集しコンピュータによって再構成し、断面画像上の放射性同位元素の分布画像として表すSPECT検査も行っています。
さらに有益な情報を得るためにSPECT画像とCT画像を重ね合わせて得られるFusion画像の作成も行っています。
検査薬からの被ばくは、一般に年間に自然界から受ける被ばく量とほぼ同じ量です。
また、放射性物質は時間と共に減少していき、尿や便中からも排泄されますので、数日で消失してしまいます。
薬自体の副作用はほとんどありません。
食事などにより体内に入ったヨウ素は甲状腺に集まり、甲状腺ホルモンの合成に利用されます。
また、放射性ヨウ素も食物から取るヨウ素と同じように甲状腺に取り込まれます。その特性を利用したのが、放射性ヨウ素甲状腺検査です。
通常、2日間の連続通院が必要です。(どうしても2日間連続して来院できない場合、1日通院でも可能な場合がありますのでご相談ください)
放射性ヨウ素のカプセルを服用していただきます。
甲状腺の摂取率測定と甲状腺シンチグラムの撮像を行います。
摂取率測定では、甲状腺に放射性ヨウ素がどのくらい取り込まれているのかを検査し、甲状腺の機能を調べます。
シンチグラムでは、甲状腺の大きさ、形態、放射性ヨウ素の分布状態をみます。
検査時間は15分程度で終了します。(摂取率測定:約2分、シンチグラフィ:約10分)
甲状腺が放射性ヨウ素をスムーズに取り込めるようにするため、検査を行う4~7日前からヨウ素を含む食品の制限と、ヨウ素を含む薬品を中止していただきます。また下記項目に該当される方は、検査できない場合があります。診察時に担当医師へご相談ください。
甲状腺がん細胞もわずかではありますが、ヨウ素を取り込む機能があります。
その機能を利用して甲状腺がんの遠隔転移を調べるのが、放射線ヨウ素全身検査です。
検査方法には、タイロゲンを使用する方法と、甲状腺ホルモン薬を休薬する休薬法の2つの方法があります。
タイロゲンを 使用する方法 |
休薬法 | |
---|---|---|
メリット | 甲状腺ホルモン薬を服用できるので、機能低下症の症状がでない。 |
注射がない分、来院回数が少ない。 |
デメリット | 注射薬の費用がかかる※。 休薬法に比べ、注射のための2日間の来院が必要となり、費用と手間がかかる。 |
甲状腺ホルモンが不足するため、機能低下の症状が出る。 甲状腺ホルモンの不足により、わずかに残っているがん細胞が刺激される可能性がある。 |
※注射薬の費用は3割負担で6万円程度かかりますが、高額療養費制度の利用や、患者様の年齢によって金額が低くなる可能性があります。
タイロゲンを使用する方法・休薬法のどちらの場合でも、2週間前からヨウ素を含む食品の制限をしていただきます。放射性ヨウ素カプセルを服用した後は、下記の生活制限をお守りください。
また下記項目に該当される方は、検査できない場合があります。診察時に担当医師へご相談ください。
当院での甲状腺検査以外で一番検査数が多い99mTc-MIBIを用いた副甲状腺機能亢進症の検索について説明いたします。この検査は甲状腺の左右両葉の側面の上下に2対、合計4個ある副甲状腺のどこが機能亢進症になっているのか見つけるために行われます。99mTc-MIBIは副甲状腺の機能が亢進している細胞に長く分布する性質があるためシンチグラムでは集積が強くなり黒く表示されます。
検査の流れは下記のように進めていきます。
静脈注射後15分後に1回目の撮像(早期像)を行います。検査時間は15分程度です。副甲状腺機能亢進症はまれに副甲状腺の領域外に存在する異所性(腺外)副甲状腺があるためまず初めに縦隔部位を含んだ広範囲で撮像します。(図1)
次に頚部のみを撮像します。(図2)
甲状腺にはうっすらと集積し副甲状腺には多く集積します。
2時間後に2回目の撮像(後期像)とSPECT検査を行います。検査時間は約40分です。2回目の撮像(後期像)では甲状腺の集積は消え副甲状腺のみに集積します。(図3)
次にSPECT検査です。頚部から放出されているガンマ線を検出し、その分布を断層画像にします。検査は頚部の周りを30分間かけて180度検出器が回転します。この検査を行うことにより、副甲状腺の位置情報を詳しく観察することが可能になります。検出器が体の近くを通るため圧迫感がありますが当たらないようになっていますのでご安心下さい。このような流れで検査を進めていきます。
頚部CT画像とSPECT画像を重ね合わせてできるFusion画像の作成も行っており解剖学的に副甲状腺を正確な位置に表示することが可能です。(図4)
赤く表示されている場所が副甲状腺亢進症で99mTc-MIBIを取り込んだことを示しています。
悪性腫瘍(主に、悪性リンパ腫・甲状腺未分化がん)や炎症性病変の診断
主に、副甲状腺腫瘍の検索
主に、骨病変の検索
主に、骨病変の検索
ヨウ素や薬の制限が不要な甲状腺検査
主に、髄様がん・褐色細胞腫の検索
主に、甲状腺分化がんの検索
下記項目に該当される方は、検査できない場合があります。診察時に担当医師へご相談ください。