内服薬(抗甲状腺薬)による治療、アイソトープ(放射性ヨウ素)治療、手術の3つの方法があります。
まずは内服薬の治療を開始することが多く、その後、病状、年齢、社会的状況などよっては他の治療も検討します。
甲状腺ホルモンの合成を抑える薬(抗甲状腺薬)を規則的に服用する方法です。薬の種類はメルカゾールやチウラジール/プロパジール(チウラジールとプロパジールは同じ成分です)の2種類です。
病状によって適切な量の薬を内服し、およそ1~3カ月で甲状腺ホルモン値が正常になると、症状がおさまり通常の生活ができるようになります。
薬の治療で大事なことは、定期的に甲状腺ホルモン値を測定し、状態に応じた適切な量の薬を継続して服用することです。
内服治療は最短で2年程度はかかり、それよりも長い期間の内服を要する場合もあります。最小量の服用で半年以上甲状腺機能が正常に保たれていれば、薬の中止を検討します。中止後、甲状腺ホルモンが再上昇(再発)することもありますので、状態を定期的に確認することが大切です。
また、治療開始後2~3ヶ月間は副作用が起こりやすく、この間は2週間毎の通院が必要です。
食物中のヨウ素は、甲状腺に集まり甲状腺ホルモンの原材料として使用されます。放射性ヨウ素も甲状腺に集まる性質があり、集まった放射性ヨウ素は放射線の力で甲状腺細胞を減らし、甲状腺ホルモンの産生量を減少させます。
放射性ヨウ素のカプセルを内服し、およそ2〜6カ月後には甲状腺が縮小し、甲状腺ホルモンの分泌も次第に減少します。治療効果には個人差があり、治療後、甲状腺機能が正常となって内服治療が不要になる方もいれば、低下症となり甲状腺ホルモン薬の内服を継続する必要がある方もいます。
治療の前後、ヨウ素制限を行う必要があり、抗甲状腺薬やヨウ素薬の中止も必要です。治療後4~6ヶ月間は甲状腺ホルモン値の大きな変動が起こる可能性がありますので、約1ヶ月毎に来院していただき内服量の調整が必要となります。
放射線を使用する治療ですので、妊婦・授乳婦、18歳以下の方には行っておりません。
(1)放射線を使う治療のため、がんの発症を心配されることが多いのですが、そうした心配がないことが統計的に証明されています。また、この治療を受けた方の子孫への影響もないとされています。
(2)アイソトープ治療後に眼症状が悪化し、眼の治療を行なった方が2%程度報告されています。治療前に眼科的な検査(診察、MRI検査)で、この治療が可能な状態かどうか評価する必要があります。
甲状腺ホルモンを過剰分泌している甲状腺組織を外科的に切除し、甲状腺ホルモン過剰の状態を改善させる方法です。
以前は甲状腺組織を少し残す亜全摘術を行っていましたが、甲状腺機能亢進症の再発率が高いため、当院では甲状腺組織を残さない全摘術を行なっています。
甲状腺ホルモンを低下させる抗甲状腺薬は手術翌日より中止可能ですが、手術後は甲状腺ホルモン薬の内服が必要となります。甲状腺ホルモン薬は副作用の心配も少なく、内服量が一定すると長期処方が可能となり、通院回数も少なくなります。
(1)再発が少ない。
(2)抗TSHレセプター抗体(TRAb)が亜全摘より早期に正常化することが多い。
3つの治療法にはそれぞれ利点と欠点があります。病状、年齢、社会的状況などを考慮して適した治療方法を選ぶ必要があります。また薬での治療中に病状が変わってくることもありますので、その状況に応じて治療方針を変更することもあります。
薬による治療 | アイソトープ(放射性ヨウ素内用)治療 | 手術療法 | |
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適してる方 | あらゆる年齢層 ・薬を定期的に飲める方 ・甲状腺腫が小さい方 *ただし、妊婦、授乳婦、小児は薬の種類を選ぶ必要あり。 |
妊婦・授乳婦でない方、近い将来に妊娠の予定がない方や19歳以上の方で ・薬で治りにくい方 ・薬で副作用がでた方 ・甲状腺腫が大きい方 ・早く治したい方 |
・薬で治りにくい方 ・薬で副作用がでた方 ・甲状腺腫が大きい方 ・早く治したい方 ・甲状腺の腫瘍を合併している方 |
利点 | ・通院しながら治療が可能 ・診断当日から治療開始が可能 |
・薬治療より治療効果が短期間に得られる ・副作用や合併症が少ない ・再発しにくい |
・ほかの治療より治療効果が早期に得られる ・手術翌日から抗甲状腺薬を中止できる ・再発が少ない ・甲状腺ホルモン薬は長期処方が可能 |
欠点 | ・時間がかかることが多い ・再発が多い ・副作用の可能性がある |
・1回の治療で十分な効果が得られないことがある ・抗甲状腺薬をやめるまでに1年以上かかることもある ・甲状腺機能低下症になることがある ・甲状腺腫が大きい場合、心疾患、糖尿病などの合併症がある場合、高齢の場合は入院を要する ・甲状腺眼症が悪化することがまれにある |
・傷跡が残る ・甲状腺機能低下症になる ・手術に伴う合併症の可能性がある ・入院を要する |